広島高等裁判所岡山支部 昭和25年(う)8号 判決 1950年4月26日
被告人
小橋嘉洋
外三名
主文
被告人上原堅、安藤満の本件控訴を棄却する。
被告人小橋嘉洋、福盛敬一に対する原判決を破棄する。
被告人小橋嘉洋に対する本件を岡山地方裁判所に差戻す。
被告人福盛敬一を懲役十箇月及び罰金一万円に処する。
被告人福盛敬一が右罰金を完納することができないときは金百円を一日に換算した期間
同被告人を労役場に留置する。
被告人福盛敬一に対しては裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
被告人安藤満の当審に於ける未決勾留日数中百日を同被告人の本刑に算入する。
理由
弁護人田淵洋海の控訴趣意第一点について。
しかし共犯の事実即ち犯人が他人と共同して当該犯罪を行つたものであることは犯罪の構成要件所謂「罪となるべき事実」には属しないものと解すべきであるからこれを判決に摘示して居らないとしても所論の如く違法となるものではない。又原判示第一の(二)の本文とこれに引用の別表とを照合すれば(1)被告人上原堅、浜愛治、安藤満は昭和二十四年八月二十四日午後十二時頃玉野市渋川四五二番地藤本次郞吉方で同人所有の荷積用中古自転車一台を盜み(2)被告人上原堅、安藤満は同年九月六日午後十二時頃岡山県邑久郡朝日村大字犬島三四二番地中村淸三郞方で同家人所有の女物ラシヤオーバー外衣類四点を盜み(3)被告人上原堅、小橋嘉洋、安藤満は同年九月六日午後十二時頃同村大字犬島三〇番地小橋芳郞方で同人所有の自転車タイヤ三本外衣類短靴等六点を盜み(4)被告人上原堅、小橋嘉洋、安藤満は同年九月十三日午後十二時頃同村大字犬島三三八番地次田香方で同人所有の防寒コート外衣類等三、四点を盜んだ事実を認定摘示したことになるのであるがかくの如く二人以上の者が同一日時同一場所に於て同一の被害者から右程度の物品を竊取したと表示すれば他に格別の説明が附せられない限りそれは共同で行つたことをあらわしたものと観るのが社会の常識であろう。尤もこの場合でも判決には正確を期し疑問の余地を残さぬように「共同して」或に「共謀して」と明言するのが通例でそれが又望ましいことでもあるが併し偶々これを記載しなかつたとしても直に共犯の摘示がないものとすべきでないことは前の説明で明かである。従つて原判決には所論の如く罪となるべき事実の摘示が無いとか理由不備の違法が存するとか謂うことにならないので論旨は到底これを採用することができない。
(註、事実誤認及量刑不当により破棄差戻、自判)